アービトラージベッティングとは?ブックメーカーで禁止?やっても良い?分かりやすく解説
はじめに 今回のテーマはブックメーカーのアービトラージベッティング(Arbitrage Betting)。アービトラージとは商品価格の差を利用して、利ざやで稼ぐ手法。株や通貨の取り引きをされる方ならよく耳にする言葉かもしれません。取り引きの手法としては、地味だけど確実に稼ぐ手法といえるでしょう。そのため、アービトラージベッティングのことを別名シュアベットSure Bet(確実な賭け)とも言います。 ブックメーカーの多くはアービトラージベッティングを禁じ手とみていますので、下手に手をだすと大変なことになってしまいますが、違法というわけではないのがポイント。また、アービトラージベッティングが機能する仕組みを理解しておくと、ベッティングに広がりがでるのも確かです。ということで今回は、ブックメーカーのアービトラージベッティングについて初心者の皆さんにも分かりやすく解説していきます。 アービトラージベッティングとは何か? まずは、アービトラージベッティングとは何かを説明していきます。アービトラージベッティングはArbitrage Bettingと綴ります。ベッティングは賭けることですので、Arbitrageを使った賭けのことをアービトラージベッティングと言うのですね。 では、そのアービトラージArbitrageとは何かということですが、端的にいうと、価格の差や変化を利用して利ざやを稼ぐことです。およそすべての商売の基本は価格差を利用していますので、アービトラージというのは原始的な商取引の方法と言っても良いのです。 まず、価格と価値は別物であることに注目してください。価格は物の値段、価値はその物が持っている値うちのことです。物やサービスの価格というのはその価値によって決まるのですが、その価値というのは時と場所と場合、つまり、TPOによって変化します。 例えば、アフリカのように物価の安い土地にはたくさんあって必要とされない物が日本では希少で価値のある物なら、アフリカで安く購入して、日本で高く売れば利益がでますよね。 また、今の時期は必要とされないから安いけど、3ヶ月先には需要が高まることが分かっているものがあれば、今安く買って3ヶ月先に高く売れば良いわけです。 アービトラージというのは、こうした価値の変化や差による価格の違いを利用して、その差額でお金を儲けようとする手法、考え方を言うのですね。 アービトラージは利ざやを稼ぐというその性質から、証券取引や通貨の取り引きで利用されることが多く、その極端なケースが話題になったりします。公式な日本語では「裁定取引」と訳されることが多いのですが、取り引きの現場ではさや取りとも呼ばれます。 アービトラージは胴元(賭けを提供する側)に嫌われることが多く、また、ブックメーカーの場合、実質禁止扱いにしているところも多いため、違法な手法と考えられがちですが、その理論は合理的で、実行も決して違法ではありません。 スポーツベッティングもお金のやり取りの場ですので、ブックメーカー間のオッズの差に着目して利ざやを稼ぐアービトラージベッティングと呼ばれる手法が存在するのですね。 アービトラージベッティングは実際にどう行うのか? では次に、アービトラージベッティングが実際にどう行われているかをご説明しましょう。 まず前提として、スポーツベットを提供しているブックメーカーがたくさんあり、いずれのブックメーカーもそれぞれ独自のオッズを提案していることは皆さんご存知のとおりです。 ここで、ブックメーカーを店、スポーツベットを商品としてみましょう。一つの商品(ある特定のゲームへのベッティング)の価格が店によって違うという状況がみえますね。アービトラージが発生する土壌があるわけです。 しかし、通常のブックメーカーのオッズは、当然ながらブックメーカー側が儲かるように設定されています。ブックメーカーは賭場の胴元ですので、これは当たり前のことです。そうでなければ、賭場を維持していけません。 ところが、多数のブックメーカーを利用し、それらのブックメーカー間のオッズに際立った差が生じると、胴元の意図に反して、賭け手の回収率(払い戻し率)の方が100%を超えるケースが出てくるのです。 回収率が100%を超えるということは、「10割以上勝つ」ということですので、これで、アービトラージ出来る土壌、つまり、確実に勝てる状況ができたことになります。あとは、倍率に沿って賭けるだけです。 ブックメーカーやスポーツベットのサイトでは、アービトラージの状況になっているケースを自動的に発見するツールを提供しているところもありますので、アービトラージを見つけることも難しくありません。 アービトラージベッティングについて知っておくべきこと このように、アービトラージベッティングというのは回収率100%以上になるようにベットすることなので、理論的には必ず勝てる、ロジカルな勝利方法、取り引き方法といえるのです。 にもかかわらず、「アービトラージベッティングは絶対おすすめの必勝法!」とならないのは何故でしょうか。これには明確で分かりやすい理由があります。本章では、そうしたアービトラージベッティングの欠点、危険性、リスクについて説明していきます。 殆どのブックメーカーはアービトラージベッティングを禁止 冒頭でも述べたように、アービトラージベッティングはいわゆる禁じ手となっています。 アービトラージベッティングで利益をあげるにはまず第一に多くのブックメーカーに登録してアカウントを開く必要があるのですが、当のブックメーカーの多くが、アービトラージベッティングを嫌っているという現実があります。事実上、禁止されているといっても良いでしょう。 禁止と言っても、アービトラージベッティングと特定して規約に「禁止」と明記しているところは稀です。 大多数のブックメーカーでは、ブックメーカー側によるアービトラージチェックの結果、アービトラージベッティングを怪しまれた場合、「不適切な賭け行為」としてアカウント閉鎖等の厳しい処置が課されます。その点で、アービトラージベッティングはアカウントをリスクにさらす行為と言えるでしょう。 オッズが動くとアービトラージが解消する可能性がある 2つ目の理由は、オッズ。仮に、多くのブックメーカーに登録して、資金を準備し、ツールを使って確実にアービトラージベッティングで稼ごうとしたとして、もっとも気をつけなくてはいけないのは、オッズの変動です。 スポーツベットのオッズはずっと同じ数値をだしているわけではありません。皆さんご存知のように、オッズは常に動いているのです。しかも、アービトラージベッティングで相応の利益を出すには、相当の資金を注ぎ込まないといけません。賭け手としては、緊張するところです。 しかし、もたもたしていると、巨額の資金を注ぎ込んだのにオッズが動いてアービトラージが成立せず、資金回収すらできないという泣けない状況もありえます。実際、そうした失敗で一度でも負けてしまうと、気持ち的に続かなくなります。 アービトラージベッティングは一度で大勝する手法ではなく、コツコツ勝っていく方法ですので、メンタルを維持するのが大切なんですが、これが想像以上に困難なのです。アービトラージベッティングで財産を築いたという人がいないのには、こうした心理的な欠点もあることを覚えておいてください。 アービトラージベッティングは面白くない 3つ目の欠点も技術的というよりは心理的な欠点です。一言でいうと、アービトラージベッティングは面白くないのですね。アカウントバン、IPバンといった危険性をおかしてチャレンジするほど、アービトラージベッティングにストラテジーとしてのうまみ、魅力がないのです。 アービトラージベッティングは利ざやを稼ぐ手法ですので、大金をかけて小銭を回収します。多数のブックメーカーにアカウントを作って、運営の目を気にしながらツールを見ては大金をベットするのに、利益はわずか。つまり、爽快感のある賭け方ではないわけです。 確かに、理論的には「勝てる方法」ですが、実際にアービトラージベッティングを大成功させるには、1)時間、2)資金、3)根気が必要なんですね。それも、膨大な時間、資金、根気がなければ、成功には結びつかないといえます。 実際、莫大な時間と資金、根気のあるような人なら、他の方法で資金を増やすでしょう。何故なら、アービトラージベッティングはギャンブラーにとって面白い方法ではないからです。 実はこれがアービトラージベッティングが流行らない一番大きな理由かもしれません。アービトラージベッティングはベッティング(賭け)という名前を持ちながら、ギャンブラーにとって、面白みのないベットなんです。 アービトラージベッティングは勝てない? じゃあ、アービトラージベッティングは勝てないのかと言うと、そんなことはありません。 それどころか、スポーツブックの有名情報サイト、オッズペディアODDSPEDIAでは、アービトラージが成立している、つまり、確実に勝利金を手にできるゲームを見つけるツールを提供しています。 【オッズペディアのアービトラージベッティング解説ページ(英語の解説ビデオあり)】 https://oddspedia.com/ja/surebets また、ブックメーカー自らがアービトラージベッティングを奨励しているケースすらあるのです。前述のように、ブックメーカーの多くはアービトラージベッティングを牽制しています。直接言及して禁止していないところでも、アービトラージの嫌疑をかけられると、「不適切な行為」としてチェックされ、最悪、資金が凍結されることもあります。 しかし、一方で、ブックメーカー最大手の一つピナクルPinacleのように、アービトラージベッティング、どうぞ、どうぞ、というところもあるのです。ピナクルでは単にアービトラージを推奨しているだけではなく、アービトラージの可能性をチェックするカリキュレーターまで提供しています。 【ピナクルPinacleによるアービトラージベッティングの解説(ビデオ解説は英語)】 https://www.pinnacle.com/ja/betting-articles/Betting-Strategy/what-is-arbitrage-betting/PSWJPK7ECRAXM2BP 【ピナクルが提供しているアービトラージ計算表】 https://www.pinnacle.com/ja/betting-resources/betting-tools/arbitrage-calculator アービトラージの解説も分かりやすいので、アービトラージベッティングに関心のある方は、是非一度チェックしてみてください。 しかし、ここで見落としてはいけないのは、上記で述べたオッズの不定要素です。 ただでさえオッズは不安定なのに、オッズペディアやピナクルのような大手が積極的にツールを提供すれば、それだけ多くのプレイヤーがアービトラージに掛け金を投入、結果、オッズが動いて肝心のアービトラージが解消してしまうこともあるのです。便利なツールは諸刃の剣とご理解ください。 アービトラージの名を冠した詐欺に注意 アービトラージに関心を持って色々検索していると、必ず「詐欺」に遭遇します。 2020年から2021年にかけて仮想通貨の投資家の間で大きな話題になったプランスゴールド・アービトラージはその代表的な例。 これまで説明してきたように、アービトラージの仕組み自体は極めて論理的なので、「ちゃんとした人」に説明されると穴のない手法に聞こえるのです。 上記のプランスゴールド・アービトラージ(PGA)の場合も、被害総額500億円とも囁かれています。 ブックメーカーやオンラインカジノでも仮想通貨が進出してきているように、仮想通貨はベッティングの世界の近隣領域です。アービトラージの名を冠した詐欺にはくれぐれもご注意ください。 まとめ ここまでご説明してきましたように、アービトラージベッティングというのは「正確に行えば確実に稼げる」方法ではあるのです。 では、何故、実際にアービトラージベッティングで大金持ちになっている人がいないのか、ピナクルのような大手の人気ブックメーカーが何故 答えは簡単です。 「正確に行う」ことが、まず難しいという点。 もう一つ、「利ざやを稼ぐ」という性質が「ギャンブル好きの人には向かない」からというのもポイントになります。 アービトラージベッティングである程度稼ぐ人はいますが、ピタッとツボにはまってアービトラージベッティングで資金を増やす事ができると、賭けそのものが面白くなって、もっと自由に色んな賭け方をするようになるのです。 結局、論理的には正しいものの、ブックメーカー側の規則の上で縛りがあることや、ギャンブラーの楽しみが少ないという点で、アービトラージベッティングはおすすめのストラテジーになりえないのです。 ただ、アービトラージベッティングを観察していると、スポーツベッティングの基幹にあるオッズについて理解が深まりますので、本記事でご紹介したピナクルやオッズペディアのツールを利用してアービトラージの実際の例をチェックしてみると良いでしょう。 ルールを理解して、良いスポーツベッティングをお楽しみください!